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暗号資産のステマ規制とは?改正金商法でKOL・インフルエンサー施策の何が変わるか
2026年7月成立の改正金商法で、暗号資産にもステマ規制(対価受領の表示義務)が入りました。景表法と違いKOL本人に義務がかかる点、「広告」表示の例外、有料サロンや未公表銘柄の販売に及ぶ周辺ルールまで、Web3のKOL施策の実務目線で整理します。

暗号資産やWeb3プロジェクトのプロモーションで、KOLに投稿を依頼している。投稿には「PR」と入れてもらっているが、それで足りているのか自信がない。そんな担当者は少なくないはずです。
2026年7月15日に成立した改正金融商品取引法(金商法)で、暗号資産にも「ステマ規制」が入りました。しかも2023年から始まった景品表示法のステマ規制とは、義務を負う人が違います。
この記事では、KOL施策を設計する側の目線で、何が求められるのか、いつから効くのかを整理します。
この記事でわかること
暗号資産版ステマ規制(改正金商法171条の12)の中身
景表法のステマ規制との違いと、KOL本人に義務がかかる意味
有料サロン、未公表銘柄の販売など、あわせて押さえたい周辺ルール
施行日の考え方と、今のうちに見直したいKOL契約・投稿の項目
結論:対価を受けた「取引判断の意見」には、その旨の表示が必要になる
先に結論です。暗号資産の発行者や金融商品取引業者などから対価を受けて、取引判断に関する意見を一般に発信する場合、対価を受けて行う旨をあわせて表示することが義務になります。
義務を負うのは「何人も」。つまり、依頼した企業だけでなく、発信するKOL・インフルエンサー本人が対象です。
項目 | 景表法のステマ規制 | 改正金商法の暗号資産ステマ規制 |
|---|---|---|
根拠 | 景品表示法(指定告示) | 改正金商法171条の12 |
開始 | 2023年10月1日 | 暗号資産部分の施行日(政令で定める日) |
義務を負う人 | 広告主(事業者) | 何人も(KOL本人を含む) |
対象 | 事業者の表示と分かりにくい広告 | 対価を受けて行う取引判断に関する意見 |
例外 | なし(表示を明瞭にすれば適法) | 広告料を対価に「広告」として表示する場合 |
(出典:改正金融商品取引法案 第171条の12(本文・但書)、アンダーソン・毛利・友常法律事務所「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案について」2026年5月1日、消費者庁 ステルスマーケティング告示)
条文が求めていること
171条の12が求めているのは、シンプルに言えば「お金をもらって意見を言うなら、もらっていると書く」ことです。要件を分けると次の3つになります。
誰から:特定暗号資産の発行者や、金融商品取引業者等から対価を受けること
何を:暗号資産の取引判断に関する意見であること
どこで:一般に向けて表示すること(SNS投稿、動画、記事などが想定されます)
金融審議会のワーキング・グループ報告は、この規定の狙いを「いわゆるステルスマーケティングを規制するため」と明記しています。インターネットサイト等での意見表示を想定した設計です。
じつは有価証券の世界には、同じ趣旨の規定が以前からあります。金商法169条の「対価を受けて行う新聞等への意見の表示の制限」です。今回はその考え方を暗号資産に広げた、と捉えると理解しやすいでしょう。
(出典:金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告 34頁(2025年12月10日))
景表法のステマ規制と何が違うのか
ここが実務で最も影響の大きいポイントです。2023年10月に始まった景表法のステマ規制は、規制の対象が広告主(事業者)でした。インフルエンサー本人は直接の規制対象ではありません。
改正金商法の規定は主語が「何人も」です。KOL本人が、自分の責任で表示義務を負います。
企業側:これまでどおり景表法の観点で、広告であることを明瞭にする責任があります
KOL側:暗号資産の取引判断に関わる発信では、本人にも表示の義務が生じます
代理店側:両者をつなぐ立場として、契約と投稿ガイドラインで抜け漏れを防ぐ役割が重くなります
KOLにとっては「企業に言われたからPRと書く」から「自分の義務として書く」への変化です。報酬交渉の段階から、表示を前提にした条件設計が必要になります。
「広告」として出せば対象外。ただし表示の仕方がすべて
171条の12には但書があります。広告料を受ける者が、その広告料を対価とし、広告として表示する場合は、この義務の対象外です。
つまり、最初から「広告」として出す投稿は、別途「対価を受けています」と書き足す必要はない、という整理です。ポイントは、読み手から見て広告だと分かる形になっているかどうかです。
広告として出す:投稿冒頭に「広告」「PR」と明示し、プラットフォームの有料パートナーシップ表示も使う
意見として出す:個人の見解の形をとるなら、対価を受けている事実を同じ投稿内に書く
避けたい形:ハッシュタグの最後尾に小さく「#PR」を紛れ込ませるだけの表記
どちらの型で出すかを、施策ごとに先に決めておくのが現実的です。
あわせて押さえたい周辺ルール3つ
改正金商法には、KOL施策や日本向けプロモーションに関わる規定がほかにもあります。ステマ規制だけ見ていると、ここを見落としがちです。
1. 有料サロン・シグナル配信は投資助言・代理業の対象に
暗号資産現物の価値などに関する投資助言が、投資助言・代理業の規制対象になります。背景として、暗号資産の投資セミナーやオンラインサロンを通じた悪質な事例が挙げられています。
有料コミュニティで売買の助言をしているKOLは、無登録のまま続けられるのかを確認する必要があります。
2. 表現そのものを禁じる規定
特定暗号資産について「有利な条件で買い付ける」といった表示や、一定の金銭の供与などを表示することを禁じる規定も設けられます(171条の13・171条の14)。
キャンペーン文言で「保有するだけで毎月◯%」のような約束型の表現を使っている場合は、施行前に見直す価値があります。
3. 無登録業者による未公表暗号資産の販売は原則無効
無登録業者が、国内の業者で取り扱われていない「未公表暗号資産」を売り付けた契約は、原則として無効になります(171条の15)。
海外プロジェクトが日本居住者向けにトークン販売を案内するプロモーションは、KOLが関わる時点で、誰がどの立場で販売しているのかを確認しておくべきです。
(出典:改正金融商品取引法案 第2条第8項第11号ほか、第171条の13〜第171条の15(前掲・アンダーソン・毛利・友常法律事務所の解説による))
いつから効くのか
暗号資産に関する規定の本体は、公布日(2026年7月23日)から1年を超えない範囲で政令が定める日に施行されます。遅くとも2027年7月22日までです。
一方、無登録で金融商品取引業を行う者への罰則は、2026年8月12日に10年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金へ引き上げられました。日本居住者に暗号資産デリバティブを無登録で提供するケースなどが、すでにこの対象です。
すでに有効:無登録の金融商品取引業への罰則強化(暗号資産の現物取引業が金商法に移るのは本体の施行後)
施行日待ち:ステマ規制、投資助言の業規制、表示の禁止、未公表暗号資産の契約無効
施行日が決まってから契約書と投稿ルールを作り直すと、走っている施策を止めることになります。今のうちに型を決めておくのが得策です。
(出典:令和8年法律第64号 附則第1条、金融庁の関係政令に関する公表(2026年7月29日))
KOL施策で今のうちに見直したい5項目
最後に、Dawinが日々KOL施策を設計するなかで、優先して点検しているポイントをまとめます。
契約書:表示義務がKOL本人にもあることを明記し、表示方法(冒頭表記・有料パートナーシップ機能)を指定する
投稿ガイドライン:「広告として出す型」と「意見として出す型」を分け、それぞれの必須表記を決める
報酬設計:トークンでの支払いやアフィリエイト報酬も「対価」に当たりうる前提で設計する
海外KOLの日本語投稿:日本居住者に向けた発信には日本のルールが関わる。海外KOLにも日本向けガイドラインを渡す
有料コミュニティ:売買助言をしているKOLとの協業は、登録の有無を確認してから進める
法律の細かな解釈は、政令・内閣府令と当局の運用で固まる部分もあります。個別の案件は弁護士への確認とあわせて進めてください。
まとめ
暗号資産のKOLマーケティングは、2027年にかけて「表示をする前提」のゲームに変わります。押さえるべき点は3つです。
主語が変わる:義務を負うのは広告主だけでなく、発信するKOL本人も
型を選ぶ:広告として出すか、意見として出して対価を明示するか
周辺も変わる:有料サロン、約束型の表現、未公表銘柄の販売も規制の射程に入る
ルールが明確になることは、きちんと設計された施策にとっては追い風です。読み手に信頼される表示が、そのまま成果の土台になります。
株式会社Dawinは、北米・東南アジア・欧州など幅広い地域を対象に、海外向けのSNS・インフルエンサー(KOL)マーケティングを支援しています。なかでもWeb3関連事業のマーケティングでは国内トップレベルの実績があります。
「日本向けのKOL施策を新しいルールに合わせて組み直したい」「海外KOLに渡すガイドラインを作りたい」。そんなご相談を歓迎しています。
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