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日本の暗号資産規制はこう変わった|2026年改正金商法・分離課税20%・ステーブルコインの実務整理
2026年7月成立の改正金商法で暗号資産は資金決済法から金商法へ移管されます。インサイダー規制と情報公表の新設、別法で決着した申告分離課税20%、円建てステーブルコインの複線化、金融庁の組織再編まで、日本企業の海外担当者向けに決定事項と未確定事項を切り分けて整理しました。

海外のパートナーから「日本の暗号資産規制は結局どうなったのか」と聞かれ、うまく答えられなかった。そんな経験はないでしょうか。
2026年、日本のルールは実際に大きく動きました。7月に改正法が成立し、税制は3月に別の法律で先に決着しています。
ただし報道は断片的で、いつ何が変わるのかが見えにくい。この記事では、決まったことと未確定のことを分けて整理します。
この記事でわかること
暗号資産が資金決済法から金商法へ移管される意味と、事業者名称の変更
すでに施行された部分と、まだ政令待ちの部分の切り分け
申告分離課税20%が「別の法律」で決まっている事実と、適用開始時期の考え方
円建てステーブルコインの複線化と、金融庁の組織再編が示すシグナル
図:2026年に動いた3つの法律と、金融庁の体制変更
まず押さえるのは「資金決済法から金商法への移管」
2026年7月15日に成立した改正法の中心は、暗号資産取引の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移すことです。公布は7月23日、令和8年法律第64号です。
有価証券とは別枠の金融商品として金商法に位置づけ、第一種金融商品取引業に相当する規制をかける設計になっています。
名称が変わる:「暗号資産交換業者」は「暗号資産取引業者」になります
根拠法が変わる:資金決済法第3章の3は削除されます
規制水準が上がる:無登録業の罰則は拘禁刑3年から10年へ引き上げられます
(出典:金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律〈第221回国会 閣法第57号、令和8年法律第64号〉)
施行日は「一部だけ先行」。本体はまだ政令待ち
実務で混乱しやすいのが施行日です。本体は「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。
2026年9月2日時点で、施行日を定める政令の公布は金融庁サイトで確認できません。言えるのは、遅くとも2027年7月22日までに施行されるという範囲までです。
施行済み:無登録業の罰則引上げと証券取引等監視委員会の犯則調査権限追加は2026年8月12日
2027年4月1日:サステナビリティ情報の開示・保証、スタートアップ資金供給関連
2027年10月1日:犯則調査手続のデジタル化
既存業者には経過措置があります。施行日から6か月は金商法の登録なしで業務を継続でき、期間内に申請すれば処分があるまで継続可能です。
ただし施行日から2年が経過した時点で、この経過措置は打ち切られます。移行準備の実質的な締切と考えるべきでしょう。
(出典:令和8年法律第64号 附則第1条・第8条/関係政令 2026年7月24日閣議決定・7月29日公布)
新設されるのはインサイダー規制と情報公表
今回の改正で新しく入るのが、暗号資産のインサイダー取引規制です。対象は、国内の暗号資産取引業者で取り扱われる暗号資産に限られます。
重要事実は3類型:発行者等に関する事実、取引業者の取扱開始・中止、大量売買を行う者に関する事実
大量売買の基準:発行済暗号資産の20%以上の売買等を政令で定める予定
罰則:5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、または併科
もう一つが情報公表規制です。発行者がいる「特定暗号資産」は発行者が、ビットコイン等は暗号資産取引業者が事前に情報を公表します。
継続開示も入ります。重要事象が発生したときの臨時情報と、年1回の定期情報。虚偽記載には10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金等が科されます。
監査法人等の財務監査がない場合は投資上限が設定されます。50万円超なら収入または純資産の5%まで、上限200万円という株式投資型クラウドファンディング同様の水準が予定されています。
(出典:改正金融商品取引法 第171条の7〜第171条の10、第27条の39・第27条の50・第27条の51・第27条の59・第27条の60)
業規制は仲介・運用・助言、そして勧誘表現まで広がる
規制の網は取引所だけにとどまりません。周辺プレイヤーにも業規制が及びます。マーケティングや事業開発の担当者が見落としやすい部分です。
仲介:暗号資産取引に係る仲介業が金融商品仲介業に追加されます
運用・助言:暗号資産の投資運用・投資助言が業規制の対象になります
システム提供者:暗号資産管理の重要システム提供業者に事前届出と安全性確保義務が課されます
顧客補償:不正流出時の補償原資として責任準備金の積立てが求められます
勧誘まわりも厳しくなります。対価を受けて取引判断に関する意見表示をする場合のステルスマーケティング規制は、PR施策に直接効いてきます。
さらに無登録業者による売付けは原則無効とされ、立証責任も転換されます。新規口座開設直後にアンホステッド・ウォレットへ移せない熟慮期間も、内閣府令事項として予定されています。
(出典:改正金融商品取引法 第2条第8項第11号・第12号、第2条第11項第2号、第43条の7、第46条の5、第171条の12、第171条の15)
税金は「別の法律」で先に決着している
ここが最も誤解されやすい点です。申告分離課税の根拠は改正金商法ではありません。所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)が根拠です。
この法律は2026年3月31日に成立・公布され、同年4月1日に施行されました。租税特別措置法に第38条の2と第38条の3が創設されています。
税率:特定暗号資産の譲渡所得等は所得税15%、住民税5%と合わせて20%
損失繰越:控除しきれない損失は翌年以後3年内の特定暗号資産の譲渡所得等から繰越控除
デリバティブ:特定暗号資産のデリバティブ取引の差金等決済も先物取引の課税の特例の対象に
注意すべきは対象外の扱いです。分離課税から外れる暗号資産は総合課税に残り、しかも3つの取扱いが不利になりました。
5年超保有資産の譲渡所得を2分の1とする措置が不適用
譲渡所得の特別控除額50万円を控除しない
他の総合課税所得との損益通算が不適用
海外取引所やDEX、個人間取引はこちら側に残ります。国内の登録業者を使うかどうかで税負担が変わる構図です。
事業者側には報告義務も生じます。居住者等と特定暗号資産の売買等を行った業者は、翌年1月31日までに氏名・個人番号等を記載した報告書を所轄税務署長に提出します。
ただし適用開始年はまだ確定していません。改正金商法の施行を前提とする条文構成で、専門家解説では実務上2028年1月1日開始が有力とされています。
(出典:所得税法等の一部を改正する法律〈令和8年法律第12号〉、租税特別措置法第38条の2・第38条の3/適用開始年は改正金商法附則第1条第7号をふまえた専門家解説による見通し)
ステーブルコインは「複線化」が実装フェーズに入った
暗号資産と並行して、円建てステーブルコインの実装も進みました。制度面では、さらに別の法律が先に動いています。
令和7年法律第66号の資金決済法改正が2026年6月1日に施行され、信託型の裏付資産運用の柔軟化や、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の創設が実施されました。
資金移動業型:JPYC株式会社が2025年8月18日に資金移動業者登録、同年10月27日に「JPYC EX」を稼働
信託型:国内初の信託型円建てSC「JPYSC」が2026年6月24日に提供開始(発行体はSBI新生信託銀行)
JPYCのオンチェーン総流通量は2026年8月18日時点で約28.3億円。10億円到達が6月26日、20億円到達が7月9日と、直近の伸びが目立ちます。対応チェーンはKaia・Polygon・Ethereum・Avalancheです。
登録状況も押さえておきましょう。電子決済手段等取引業者は2026年8月27日現在で2社、暗号資産交換業者は同年8月21日現在で27社です。
銀行側も動いています。3メガバンクは信託型ステーブルコインの共同発行で基本合意し、2026年度中の実取引開始を目指すと公表しました。
トークン化預金の実証も進行中です。金融庁のFinTech実証実験ハブ採択案件に43社が参加し、2026年8月20日に本格的な検証が始まりました。参加銀行は15行です。
(出典:資金決済に関する法律の一部を改正する法律〈令和7年法律第66号〉および関係政令・内閣府令〈2026年5月22日公布〉/電子決済手段等取引業者・暗号資産交換業者の登録状況、2026年8月時点)
(出典:JPYC株式会社/SBI新生信託銀行・SBI VCトレード/3メガバンクの共同公表〈2026年6月〉/金融庁「FinTech実証実験ハブ」採択案件、いずれも2026年8月時点)
金融庁の組織再編が示すシグナル
制度と同じくらい見ておきたいのが監督側の体制です。金融庁は2026年8月5日に組織再編を公表し、8月7日付で「暗号資産・ステーブルコイン課」を新設しました。
格上げ:従来の参事官室体制から、独立した課へ
局の再編:総合政策局と監督局を「銀行・証券監督局」「資産運用・保険監督局」へ
新設は5課:国際課、信用課、郵政金融課、資金決済課、暗号資産・ステーブルコイン課
暗号資産・ステーブルコイン課と資金決済課は、いずれも新設の資産運用・保険監督局に置かれます。恒常的な監督対象になった、という意思表示です。
会計と税制も動いています。ASBJは2026年8月17日に電子決済手段の会計処理に関する実務対応報告の改正案を公表しました。コメント期限は10月19日です。
金融庁の令和9年度税制改正要望では、Web3関連の主な要望項目が信託型ステーブルコインに係る措置1本に絞られています。
(出典:金融庁の組織再編に関する公表〈2026年8月5日〉および金融庁組織令の一部を改正する政令等/企業会計基準委員会 実務対応報告公開草案第74号/金融庁 令和9年度税制改正要望〈2026年8月31日公表〉)
海外向けに発信する担当者が、いま整理すべきこと
最後に実務です。海外のパートナーや投資家に日本の状況を説明する場面で、押さえておくと差がつくポイントを挙げます。
法律を混ぜない:金商法移管、税制、ステーブルコインはそれぞれ別の法律です
施行日を断定しない:本体は政令待ち。言えるのは「2027年7月22日まで」という範囲
登録の有無で説明する:税制も規制も、国内の登録業者かどうかで扱いが変わります
PR表現を点検する:ステマ規制の新設で、対価を伴う意見表示の扱いが変わります
とくにKOLやアンバサダーを起用する施策は、要件が固まる前に社内ルールを詰めておく価値があります。施行後の作り直しはコストがかさみます。
まとめ
2026年の日本は、暗号資産を「決済の周辺」から「金融商品」へ位置づけ直した年でした。方向性そのものは明確です。
移管:資金決済法から金商法へ。名称も規制水準も変わる
税制:分離課税20%は別法で成立済み。適用開始年は金商法の施行待ち
SC:資金移動業型と信託型の複線化が実装フェーズへ
体制:金融庁に専任の課が置かれ、監督が恒常化した
未確定なのは施行日と、特定暗号資産の具体的な範囲です。ここを断定せずに語れるかどうかが、海外向けコミュニケーションの信頼性を左右します。
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