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海外のIPビジネス最新トレンド2026——市場62兆円、伸びているのはアジアと「体験」
世界のライセンス市場は2025年に62兆3,680億円=3,898億ドル(+5.45%)へ拡大し、成長率トップは北アジアの+14.1%。SphereやNetflix Houseに代表される体験型シフト、ゲーム・アニメIPの映像化の明暗、中国Pop Martと韓国の攻め方まで、海外IPビジネスの現在地を数値で整理します。

海外向けにIPを使った施策を検討し始めると、最初に突き当たるのが「そもそも今、海外のIPビジネスは何が主流なのか」という問いです。ライセンス商品なのか、体験施設なのか、映像化なのか。選択肢は増える一方なのに、判断材料になる数字はなかなか出てきません。
2025年から2026年にかけて、この領域ははっきり動きました。市場全体は小売の平均を上回るペースで伸び、牽引しているのは北米ではなくアジアです。そして稼ぎ方の重心が「モノに絵柄を載せる」から「体験に来てもらう」へ移りつつあります。公表された数値をもとに、いま起きている変化を整理します。
この記事でわかること
世界のライセンス市場の規模と、伸びている地域・カテゴリ
体験型へのシフトが起きている理由と代表事例
ゲーム・アニメIPの映像化で、成功と失敗を分けているもの
中国・韓国の攻め方と、日本のIPが置かれている位置
商品・コラボ側で起きている変化と、企画時に決めておくべきこと
市場は62兆3,680億円(3,898億ドル)。伸びの中心はすでにアジア
2025年の世界のライセンス商品・サービスの小売販売額は62兆3,680億円(3,898億ドル)、前年比5.45%増でした。同期間の世界の小売市場全体の名目成長率は4.52%ですから、IPを載せた商品のほうが市場平均より速く伸びています。前年2024年は59兆1,360億円(3,696億ドル)・3.7%増でしたので、成長率そのものが加速しています。
最大セグメントのキャラクター/エンタメ分野は25兆8,880億円(1,618億ドル、前年比8%増)。うちアニメ・ビデオゲーム・コミック・SNS発IPが同カテゴリ収益の34%、劇場映画とTVが33%を占めます。かつて映像作品の付帯ビジネスだった領域が、映画・TVと肩を並べたということです。
スポーツIPは7兆1,040億円(444億ドル、+8.5%)で市場全体の11.4%。以下、出版+5.9%、アート+5.7%、カレッジ+4.8%、音楽+3.1%
地域別成長率は、日本・韓国・中国が牽引する北アジアが+14.1%で世界最高。中南米+7.6%、南アジア/太平洋+5.3%
オンライン小売が世界のライセンス売上の32%を占め、そのオンライン売上の16%がソーシャルコマース経由
51カ国・1,068社を対象に、Brandar Consultingが実施した調査です。成長エンジンはすでに日中韓に移っており、「海外=まず北米」という前提だけで企画を組むと、いちばん伸びている市場を外すことになります。
重心は「モノ」から「体験」へ
いま海外のIPホルダーがもっとも積極的に投資しているのが体験型の事業です。ラスベガスのSphereで上演中の「The Wizard of Oz at Sphere」は、2025年8月28日の開幕から約10カ月でチケット販売額640億円(4億ドル)超、累計販売枚数300万枚超を突破しました。旧作を没入型体験へ再編集し、単一会場でこの規模を生んでいます。2025年第4四半期は245回の上映でSphere Experience関連収益が174億4,000万円(1億900万ドル)増え、総収益630億4,000万円(3億9,400万ドル)はアナリスト予想を上回りました。
配信事業者も同じ方向です。Netflixは常設体験施設「Netflix House」1号店を2025年11月12日にフィラデルフィアへ開業。10万平方フィート超で、Wednesday、ONE PIECE、Stranger Things、Squid Game、Bridgerton、WWE Rawなどの体験を展開し、チケットは主要体験6,240円(39ドル)〜、VR4,000円(25ドル)〜という設計です。2025年12月11日にダラス、2027年にラスベガスを予定し、1号店は常設で約300名の雇用を支えます。無形の配信サービスを、地域雇用を伴う不動産型の事業へ接続した形です。
恒久施設だけではありません。「Squid Game: The Experience」はニューヨーク、シドニー、ソウル、マドリードを巡回したのち、ロンドンExCeLで2025年5月から2026年1月まで開催。配信ドラマを期間限定の体験商品として多都市に巡らせる型が確立しました。2025年5月22日開業のUniversal Orlando「Epic Universe」もSuper Nintendo Worldを含む5エリア構成で、ゲームIPが差別化の中核です。日本勢では、ポケモンが三井不動産・Moment Factoryと組んだ没入型施設を2026年5月27日に発表し、2027年春に欧州で開業予定。国内ではなく欧州を初出地に選んだ点に、はじめから海外市場向けに設計する姿勢が表れています。
図:ライセンス市場の規模と、いま伸びている領域
映像化は「当たれば桁違い、外すときは普通に外す」
ゲームIPの映像化にも資金が集まっています。『A Minecraft Movie』は全世界興行収入1,536億6,240万円(9億6,039万ドル。北米678億5,440万円=4億2,409万ドル、海外858億800万円=5億3,630万ドル)で、製作費240億円(1億5,000万ドル)の約6.4倍。Prime Videoの『Fallout』シーズン2は2025年12月16日の配信開始から13週間で全世界8,300万人が視聴し、シーズン1と合わせ累計1億人に到達しました。
ただしゲーム原作なら当たるわけではありません。HBOの『The Last of Us』シーズン2は初回530万人(米国クロスプラットフォーム)に対し最終回は370万人と約30%減。同じ有力IPの実写化でも結果は分かれます。
投資効率で群を抜くのが日本のアニメです。『劇場版 鬼滅の刃 無限城編』は全世界興行収入1,269億6,000万円(7億9,350万ドル)、うち海外が1,050億4,800万円(6億5,655万ドル、82.7%)、北米は219億1,200万円(1億3,695万ドル、17.3%)。製作費32億円(2,000万ドル)に対し約40倍で、収益の8割超を海外が支えています。
アニメは「日本の輸出品」から「はじめから世界向けの制作」へ
配信側から見ると、アニメの位置づけはこの数年で変わりました。Netflixでは全世界会員の50%超がアニメを視聴し、2024年の視聴回数は10億回超。過去5年で3倍になり、2024年には33本が「グローバルTOP10(非英語)」入りしました(2021年の2倍超)。吹替は最大33言語で提供され、会員の80〜90%が吹替で視聴します。2025年のアニメ視聴時間は89億時間(前年比10.6%増)で、同期間のカタログ全体の伸びが1.3%ですから、約10倍の成長率です。
専業側も拡大しています。ソニー傘下のCrunchyrollは2026年3月末時点で有料会員2,100万人を突破。2025年5月の1,700万人から1年で400万人(約24%)増え、200以上の国・地域で5万話超を配信しています。2026年には台湾(夏)と韓国(後半)へ新規参入予定で、ソニーは制作と配信の国際インフラを同時に持つ体制です。
象徴的なのが制作体制の変化です。AniplexとCrunchyrollは2025年3月17日、共同出資のアニメ制作会社「Hayate」を東京に設立し、「世界同時公開に最適化されたアニメ」を制作する目的を明示しました。日本で当ててから輸出する従来型ではなく、企画段階からグローバル前提で組む流れに変わっています。国籍を跨いだIP開発の到達点が、米Sony Pictures Animation制作・韓国文化題材・全世界同時配信の『KPop Demon Hunters』で、2025年6月の配信開始後に累計6億4,870万回視聴とNetflix史上最も視聴された映画になりました。楽曲「Golden」はBillboard Hot 100で8週連続1位です。
中国・韓国の攻め方と、日本のIPの位置
中国のPop Martの2025年通期売上高は371億2,000万元(約8,640億円/約54億ドル)で前年比184.7%増。海外売上は162億7,000万元(+291.9%)で全体の43.8%を占め、米州は68億1,000万元(+748.4%)と急拡大しました。うち「LABUBU(The Monsters)」単独が141億6,000万元(+365.7%)で全社売上の約38%。中国発IPが単一キャラクターで数千億円規模の輸出商品になった初の事例です。
一方、中国のIPがすべて輸出できているわけではありません。アニメ映画『哪吒2(Ne Zha 2)』は全世界興行収入3,342億4,000万円(20億8,900万ドル)でアニメ映画史上最高ですが、興収の99%超が中国本土でした。国内市場で数字を出すことと、海外へ持ち出す設計は別だということです。
韓国は輸出を国家目標に据えています。コンテンツ産業の輸出額は2025年に過去最高の2兆3,840億円(149億ドル。前年は2兆2,560億円=141億ドルから5.9%増)で、牽引したのは音楽(32.4%)、映画(19.9%)、キャラクター(12.8%)。政府は2030年までの「K-カルチャー市場400兆ウォン」を目標に掲げ、従来の300兆ウォンから上方修正しました。
日本はどうか。アニメ産業の世界市場規模は2024年に3兆8,407億円(約240億ドル)で前年比15%増と過去最高。うち海外市場が2兆1,700億円(+26%)で全体の56%を占め、国内市場1兆6,700億円(+2.8%)を上回りました。政府も改訂版クールジャパン戦略で、コンテンツの海外売上を2024年の約5.8兆円から2033年までに20兆円へ拡大する目標を掲げています。数字を見れば日本のIPは強い立場にありますが、人気の大きさと収益化の巧拙は別問題です。この点は「日本のIPは本当に世界で強いのか?——『人気』と『収益』のギャップを埋める3条件」で扱っています。
商品側の変化——キダルト、並列ライセンス、需要制御
ライセンス玩具は7兆4,240億円(464億ドル)規模ですが、牽引しているのは大人が自分のために玩具を買う「キダルト(kidult)」消費で、欧州では成人の40%が自分用に購入しました。ターゲットを子ども中心のまま設計すると、いま伸びている購買層を取り逃がします。
ブランド側の運用も変わりました。Crocsはディズニー、ワーナー、ポケモン、BBC、Minecraft、ドラゴンボールZ、NFL、Juicy、Marimekkoと同時並行で契約しており、単一ブランドが多数のIPを並列に回す形態が一般化しています。新しい潮流としては、女性スポーツ×消費財のコラボが急増しました。
Coach×WNBA、SKIMS×League One Volleyball
Barbie×PWHL、e.l.f. Cosmetics×NWSL(複数年契約)
Glossier×USAバスケットボール女子代表
いずれも2025年に成立した案件で、まだ枠の空いている領域を先に押さえる動きとして参考になります。
同時に、需要の制御も現実的な論点です。マクドナルド日本法人は2025年8月、ポケモンカード付きハッピーセットが想定を超える需要と転売目的の大量購入を招き、開始当日にキャンペーンを一部停止して謝罪しました。数量設計・購入制限・二次流通対策は企画と同時に決めておく必要があります。なおNFTは局面が変わり、2025年第2四半期の取引高1,316億8,000万円(8億2,300万ドル、前四半期比45%減)に対し取引件数は1,250万件(78%増)。単価が崩れて件数だけ増える状態で、投機商材ではなくファン接点の一手段として設計し直す段階です。
まとめ
押さえるべき点は4つです。
成長の中心はアジア——世界62兆3,680億円(3,898億ドル、+5.45%)に対し、北アジアは+14.1%と世界最高
稼ぎ方の重心は体験へ——没入型の再編集、常設施設、多都市巡回まで、1つのIPを場所と時間で売る型が確立した
映像化は当たれば桁違い、外すときは外す——製作費の6倍・40倍という事例の裏で、視聴者が3割落ちるシリーズもある
企画段階からグローバル前提へ——「世界同時公開に最適化されたアニメ」を掲げる制作会社や、欧州を初出地に選ぶ体験施設がその転換を示す
共通しているのは、IPを「持っていること」ではなく「どの市場で、どの接点で、どう届けるか」で差がついている点です。オンライン小売がライセンス売上の32%を占め、そのうち16%がソーシャルコマース経由という数字も、届け方の設計がそのまま売上を左右することを示しています。
株式会社Dawinは、北米・東南アジア・欧州など幅広い地域を対象に、海外向けのSNS・インフルエンサー(KOL)マーケティングを支援しています。現地のプラットフォーム特性やクリエイターの相場感を踏まえ、IPやブランドをどの市場のどの層へ、どんなフォーマットで届けるかから一緒に設計します。とくにWeb3関連事業のマーケティングでは国内トップレベルの実績を持っています。自社IPを海外へ展開したい、海外IPとのコラボを企画したいが現地の手応えが読めない、KOL施策の設計から任せたい——そんなご相談を歓迎しています。まずはお気軽にお問い合わせください。
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