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大手ブランドのクリプト活用最新事例2026|チェルシー胸スポンサーから証券トークン化まで
2026年に発表された大手ブランドのクリプト事例を整理。Circle×チェルシー、Kalshi×全米オープン、Mastercard・Western Union・Metaの決済実装、ICEとロンドン証取のトークン化まで、金額と一次情報をもとに日本企業の判断材料を示します。

「うちも海外向けに、何かクリプトを絡めた施策ができないか」。2026年に入って、こうした相談を受ける機会が増えました。
ただし前提は2021年のNFTブームとまったく違います。いま実際に動いているのは、決済とスポンサーシップという地味で実務的な領域です。
この記事では、2026年に実際に発表された大手ブランドの事例だけを並べます。推測ではなく、公式発表と報道で確認できた数字を軸に整理します。
この記事でわかること
NFT路線が終わった証拠:ナイキの子会社売却と、その後に残った訴訟
スポンサーの最新形:Circle×チェルシー、Kalshi×全米オープンの中身と金額の実態
決済・金融インフラ側の実装:Mastercard、Western Union、Meta、NYSE親会社、ロンドン証券取引所
日本企業が判断に使える論点:露出か実装か、出口をどう設計するか
図:撤退・露出・実装——2026年に予算が動いた3方向
2026年の実態:NFTは畳まれ、予算は決済とスポンサーへ動いた
最初に押さえたいのは、非クリプト大手ブランドのNFT路線が明確に後退したことです。象徴がナイキです。
ナイキは2021年後半に買収したNFT子会社RTFKTを2024年末に事業停止し、2025年12月17日に売却を完了しました。買い手も条件も非開示です。
生涯取引高は約2,400億円(15億ドル):NFTプロジェクトとして9位の規模でした
生涯収益は78億4,000万円超(4,900万ドル超):取引高の大きさに比べ、ブランド側の実入りは限定的です
撤退には法的コストが残る:2025年4月、NFT保有者が8億円超(500万ドル超)を請求する集団訴訟をニューヨーク州ブルックリンで提起し、現在も継続中です
訴状は、事業停止でNFTの価値が急落したこと、NFTを証券として登録しなかったこと、終了リスクの開示が不足していたことを主張しています。
スポンサー契約の件数も同じ方向を示します。クリプト系スポーツスポンサーは2021年がピークで、その後は水準が変わりました。
2021年は33件:全体の35.9%を占めたピーク
2022年25件、2023年8件:ブーム崩壊後に急減
2024年は26件:件数は戻したものの2021年比では38%減、2021〜24年の累計は92件
競技別の累計:サッカー33件、モータースポーツ21件、eスポーツ16件、バスケットボール8件
ブーム期には破綻事例も相次ぎました。FTX×マイアミ・ヒートのアリーナ命名権216億円(1億3,500万ドル)は解消され、FTX×Team SoloMidの336億円(2億1,000万ドル)は破綻しました。
Terra×ワシントン・ナショナルズの61億1,200万円(3,820万ドル)も解消、Voyager×NASCARは2022年の破産で無効になっています。当時の最大級はCrypto.comによるステープルズ・センター命名権1,120億円(7億ドル)でした。
つまり2026年の事例を読むときは、「またあのバブルか」という目で見るのではなく、何が構造的に変わったのかを確認する必要があります。
事例1:CircleがチェルシーFCの胸スポンサーに(プレミアリーグ初)
2026年8月28日、ステーブルコインUSDCの発行体であるCircleは公式リリースで、チェルシーFCの「Principal Partner兼オフィシャル・フロント・オブ・シャツ・パートナー」になると発表しました。
2026/27シーズンから、男子・女子・アカデミーの全ユニフォーム前面に「USDC by CIRCLE」が入ります。
暗号資産系の金融サービス企業がプレミアリーグの胸スポンサーに就くのは初めてと報じられました。初掲出は開幕のスタンフォード・ブリッジ(収容約4万人)でのブライトン戦です。
マーケ担当者として押さえるべき点は3つです。
契約金額は非開示:SportsProは「初年度1年+延長オプション」と報じ、クラブ側の提示額は1シーズンあたり5,000万ポンドとされます。確定額ではありません
クラブは4シーズン、通年の胸スポンサーが不在だった:前スポンサーThree(1シーズン約4,000万ポンドと報道)が2022/23シーズン終了で撤退した後、Damac、Infinite Athlete、IFSなど短期契約でしのいでいました
用途はブランド露出が中心:Circleの公式リリースに、クラブ側での決済利用に関する記載はありません
クラブ側は提示額について「想定市場レートに沿った金額」と説明しています。買い手不在の枠を、クリプト側の資金が埋めた構図とも読めます。
背景にはUSDCの規模拡大があります。USDCの流通量は2026年8月中旬時点で約11兆6,800億円(730億ドル)で、DeFiLlama基準のステーブルコイン市場全体の約48兆4,800億円(3,030億ドル)の約24%を占め、USDTに次ぐ2位です。
Circleは2026年後半に供給量24兆円(1,500億ドル)を目標に掲げていると報じられています。桁を伸ばす局面での、認知獲得への投資という位置づけです。
CircleのCCOであるKash Razzaghi氏は、チェルシーのジャージ上のUSDCが「オープンで国境がなく、誰にでも開かれた」グローバル金融の未来を世界に示す、とコメントしています。
CEOのジェレミー・アレア氏も、お金はインターネットのように誰にとってもシームレスに機能すべきだと述べました。
事例2:Kalshiが全米オープンの「オフィシャル予測市場パートナー」に
もう一つの新しい形が予測市場です。Kalshiは全米テニス協会(USTA)と複数年契約を結び、全米オープンのオフィシャル予測市場パートナーになりました。
2026年大会のシングルス本戦から適用され、会場サイネージと全米オープンのデジタルプラットフォームでの露出を含みます。発表と報道は2026年8月30日〜9月1日です。
特筆すべきは独占の範囲です。
競合排除の範囲が異例:USTAは競合の予測市場プラットフォームが「会場内」と「ESPNの全米オープン中継」で広告を出すことを排除しています
財務条件は非開示:契約年数も「複数年」とのみ公表されています
スケジュールが前倒しされた:USTAの新CEOクレイグ・タイリー氏が、本来2027年開始想定だった案件を今年に前倒ししたと報じられました
実際の反応も出ています。開幕時点で女子シングルス優勝マーケットには約2億4,000万円(150万ドル)の取引が集まり、アリーナ・サバレンカが23%で優勢でした。
開幕日には、単一のコントラクトで1億6,000万円(100万ドル)を超える出来高を記録したものもありました。
カテゴリ全体の伸びも急です。2026年のスーパーボウルでは、Kalshi上の取引高が1,600億円(10億ドル)超に達しました。
前年は約43億2,000万円(2,700万ドル)でしたから、1年で桁が変わった計算です。
SponsorUnitedは、このカテゴリが「リーグ単位(league-first)で入る」点で、チーム単位から始まった過去のクリプト系スポンサーと構造的に異なると分析しています。提携先も広がっています。
Kalshi:NHL、タンパベイ・ライトニング、Pro Padel League、Baller League USA
Polymarket:NHL、ニューヨーク・レンジャーズ、UFC、Major League Pickleball、PPAツアー
ただし法的な地位は固まっていません。第9巡回区控訴裁は2026年8月28日、ネバダ州の賭博規制に対するKalshiの異議申立てを退けました。
一方の第3巡回区はニュージャージー州の規制を認めない判断を示しており、CFTC管轄か州賭博法かで巡回区の判断が割れています。露出を検討するなら、この不確実性込みの評価が必要です。
事例3:決済と送金の裏側で、ステーブルコインが実装されている
看板より重要なのは、業務プロセスに入り込んだ事例です。ここは非クリプト大手が主役になっています。
Mastercardは2026年3月17日、ロンドン拠点のステーブルコイン基盤企業BVNKの買収契約を発表しました。
総額は最大2,880億円(18億ドル)です。基本価格に加え、商業マイルストーン達成に応じた最大480億円(3億ドル)の条件付き対価を含みます。
BVNKは130カ国超でエンタープライズ向けのステーブルコイン基盤を提供し、Worldpay、Deel、Flywireなどを顧客に持ちます。
当初は2026年末までの完了見込みでしたが、規制承認を得て前倒しし、2026年8月3日に完了しました。
同社リリースはBCG調査を引用し、デジタル通貨決済が2025年に少なくとも56兆円(3,500億ドル)の取引量に達したとしています。
CPOのJorn Lambert氏は、ステーブルコインがクロスボーダーB2B決済・送金・ペイアウト・決済・トレジャリーで実需に応え始めていると述べました。同様の動きは他社にも広がっています。
Western Union:2026年8月4日、Rainと「Stablecard」を開始。自社ステーブルコインUSDPT(Anchorage Digital Bankが発行、Solana上)とVisaカードを組み合わせ、37市場で受取・保有・加盟店での利用が可能に
Meta:2026年4月、Facebookのペイアウト基盤でクリエイターへのUSDC支払いを開始(SolanaとPolygon)。まずコロンビアとフィリピンで、年末までに160カ国超への拡大が見込まれます
Shopify:USDC決済は2026年ではなく2025年6月12日にアーリーアクセスで開始済み。加盟店は既定のローカル通貨受取(外貨・為替手数料なし)とUSDC直接受取を選べます
カードはApple PayとGoogle Payに対応します。Western Unionは200超の国・地域、130超の通貨で事業を展開し、年末までに60市場超への拡大を目指します。
Metaの設計変更は示唆的です。2019年発表・2022年に断念したLibra/Diemと違い、自社通貨を作らず既存のステーブルコインを使う「狭い」設計に転換しました。
共同運営型の動きもあります。2026年6月30日、独立主体「Open Standard」がドル建てステーブルコイン「Open USD(OUSD)」を発表しました。
参画は140社超で、Visa、Mastercard、American Express、Stripe、Coinbase、BlackRock、BNY、Google Cloud、IBM、Shopify、DoorDash、Fireblocksなどが名を連ねます。
従来のように単一の発行体が準備金収益を独占するのではなく、参加企業が共同で保有・ガバナンスし、運営コスト控除後の準備金収益をネットワークで分配する設計です。ミントと償還は無料で数量上限もありません。
事例4:NYSE親会社とロンドン証券取引所が「トークン化」に踏み込んだ
2026年後半に起きた最も大きな変化は、既存の金融インフラ側が動いたことです。まず、NYSEの親会社ICEです。
ICEとtZEROは2026年8月31日、公開トークン化証券市場のインフラで協業すると発表しました。ICEはtZEROの最新資金調達ラウンドに参加します(出資額は非開示)。
その一環として、ICEはtZEROのブロックチェーン特許ポートフォリオ(23の特許ファミリー・計103特許)のライセンスをDigital Trading Platform等の用途で取得します。ライセンス対象は「実務の面倒な部分」に集中しています。
移転ロジック:コンプライアンス条件を組み込んだ移転処理
スマートコントラクト基盤:アップグレード可能な設計
コーポレートアクション:大規模な処理への対応
ID相互運用性:ブローカーディーラー間での連携
tZEROはICEの「承認済みデジタル・トランスファーエージェント」かつDigital Trading Platformのサブスクライバーになる想定で、標準策定にも関与します。両社はさらに、tZEROのトークン化資産をICEの清算機関などでの担保管理に使えるかも検討します。
tZERO CEOのAlan Konevsky氏は、ICEとの提携によって公開株式へと領域を広げることは自然な前進だとコメントしました。なお、プラットフォームのローンチ時期は示されていません。
次にロンドンです。Kraken親会社のPaywardとロンドン証券取引所(LSE)は2026年9月1日、ロンドン上場の時価総額上位100銘柄をxStocks(原株1:1裏付けのトークン)としてトークン化する提携を発表しました。
最初のxStocksは数週間以内に、KrakenおよびxStocks Allianceのプラットフォームで提供される見込みです。
LSEは規制当局の承認を条件に、新設の時間外取引venue「LSE 24」でこれらを取引対象にする計画です。月曜から金曜の17:00〜翌7:50に稼働し、日中処理のため30分停止します。
米国・欧州・英国・香港のトークン化株式を並べて扱う構想で、LSEのCEOジュリア・ホゲット氏は、基準を維持しながら新しい形のアクセスから発行体と投資家がどう便益を得られるかを探る、という趣旨のコメントを出しています。
xStocksの実績はPaywardから公表されています。
累計取引高は6兆4,000億円(400億ドル):うちオンチェーン決済分が約3兆2,000億円(200億ドル)
保有者は20万人超:110カ国超で利用可能ですが、現時点で英国居住投資家は利用できません
発行体としては2位:残高は約970億円(6億606万ドル)で、Ondoに次ぐ規模です
米国でも下地はできています。SECは2026年3月18日、Nasdaqのトークン化証券取引を可能にするルール変更を承認しました。
DTCのトークナイゼーション・パイロット(2025年12月にSEC市場取引部が3年間のノーアクション・レリーフを付与)に接続し、流動性の高い一部株式・ETFのトークン版を、原株と同一のオーダーブック・同一の執行優先順位で取引できます。原株と代替可能で同一の権利を伴うことが条件です。
事例5:Better×Coinbaseの「ビットコイン担保の住宅ローン」
個人向けの実装も具体化しました。Better MortgageとCoinbaseは2026年8月26日、暗号資産担保の「適合(conforming)住宅ローン」を一般提供に移行しました。
3月に発表し、6月にウェイトリストを開始という段階を踏んでいます。商品構造はクロージング時に2本のローンを同時実行する方式です。
1本目:住宅を担保とするFannie Mae適合の第1順位モーゲージ
2本目:頭金相当を賄うための、質入れした暗号資産+住宅の第2順位リーエンで担保される別ローン
条件は共通:2本は同一金利・同一返済期間です
担保比率は250%です。4,000万円(25万ドル)相当のビットコインを質入れすると、1,600万円(10万ドル)の頭金ローンが得られます。質入れ額の40%という水準です。
ローンチ時点で受け入れる担保はビットコインのみで、ETHやSOLは「将来追加の可能性」と明記されています。
リスク設計も明快です。ビットコイン価格の下落自体では追証もマージンコールも発生しません。ただし返済が60日以上延滞した場合、質入れした暗号資産が清算される可能性があります。
利用条件は、最低FICOスコア680、Fannie Mae適合基準を満たすこと、対象地域の物件であることです。Coinbase Oneの会員が承認された場合、ローン元本の1%・合計上限160万円(1万ドル)のクロージングコスト・レンダークレジットが付きます。
需要は先行して見えていました。一般提供前のウェイトリストは、見込みローン量で416億円(2.6億ドル)超に相当したと報じられています。
土台はまだ固まっていない:規制と日本側の温度差
ここまでの事例は勢いがありますが、法制度は追いついていません。日本企業が海外展開で検討する際は、この時間差を織り込む必要があります。
GENIUS Act(米ステーブルコイン法):2025年7月18日に成立済みですが、施行は「規制当局の最終規則から120日後」か2027年1月18日の早い方。当局が2026年7月18日のルールメイキング期限を逃したため、2027年1月18日の適用が見込まれます
CLARITY Act(市場構造法):2025年7月17日に下院通過(294-134)、2026年5月14日に上院銀行委員会可決(15-9)ですが、2026年8月時点で成立していません
つまり米国の主要ルールは、2026年中はまだ「確定していない状態」が続きます。
日本側の参照点も見ておきます。円建てステーブルコインJPYCは、発行・償還プラットフォーム「JPYC EX」の累計口座開設数が19,000件、累計発行額が30億円を突破しました(2026年5月30日時点)。
2025年10月27日の正式提供開始から約7か月での数字です。対応チェーンはAvalanche、Ethereum、Polygon、Kaiaの4つで、発行上限は「1日あたり100万円」から「1回あたり100万円」に緩和されました。
桁が2つ以上違います。海外向け施策と国内向け施策を同じ設計で語れないことが、この対比からはっきり分かります。
日本企業が自社に当てるべき3つの問い
事例をそのまま真似する必要はありません。むしろ判断の順番が重要です。
露出なのか実装なのか:Circle×チェルシーは露出中心、Mastercard×BVNKやMeta、Western Unionは業務プロセスへの実装です。目的が「認知」か「決済コスト・着金速度の改善」かで、必要な予算も社内の担当部署も変わります
リーグ単位か個社単位か:予測市場はリーグ単位で入ることで、露出の面と交渉力を同時に確保しました。チーム単位から始めた過去のクリプト系スポンサーとの最大の違いです
出口をどう設計するか:ナイキのRTFKTは、事業を畳んだ後に集団訴訟が残りました。ユーザーに資産性のあるものを配る施策は、終了時の責任まで含めて設計する必要があります
加えて、金額の非開示が常態である点も押さえてください。Circle×チェルシーもKalshi×USTAも財務条件は非開示で、出回っている数字は報道推計です。
社内稟議で「相場はいくら」と問われたとき、推計値を確定値のように扱うのは危険です。非開示は非開示と明記したうえで、レンジで示すのが正しい伝え方です。
まとめ
2026年の大手ブランドのクリプト活用は、派手なNFT施策から、決済とスポンサーという実務領域へ移りました。要点を整理します。
NFTは撤退局面:ナイキはRTFKTを2025年12月に売却完了し、訴訟だけが残りました
スポンサーは新しい主体が入った:Circleがプレミアリーグ初の暗号資産系胸スポンサーに、Kalshiが全米オープンの独占的な予測市場パートナーになりました
本命は決済とインフラ:Mastercard、Western Union、Meta、そしてICEとロンドン証券取引所が実装側に動いています
ただしルールは未確定:米国の主要法は施行前で、予測市場は巡回区間で判断が割れています
日本企業にとっての現実的な出発点は、自社の海外事業で「決済・送金・クリエイター報酬」のどこに摩擦があるかを洗い出すことです。そこに当てはまらないなら、急いで動く理由はありません。
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特にWeb3関連事業のマーケティングでは国内トップレベルの実績があり、海外コミュニティ向けの発信や現地KOLの起用まで一貫して対応できます。
「海外向けにクリプト文脈の施策を検討したい」「どこまでが露出でどこからが実装か整理したい」。そんなご相談を歓迎しています。まずはお気軽にお問い合わせください。
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